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2008.03/23(Sun)

アニバーサリー企画第23弾!  (浅倉りゅぅさん作品Ⅳ) 

           2007.12~2008.03〈NIGHT HEAD〉アニバーサリー企画


           バレンタイン01


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EDIT  |  22:39 |  二次創作  | CM(3) | Top↑

2008.03/22(Sat)

アニバーサリー企画第22弾!  (chocoさん作品ⅩⅡ) 

           2007.12~2008.03〈NIGHT HEAD〉アニバーサリー企画





<聖バレンタインの憂鬱> 後編
※ 懲りずにラブコメに挑戦。有名菓子メーカーの回し者ではありませんので、あしからず。(汗)



「ありがとう」
 丁寧に包装紙で包まれた小さな箱を受け取った倉橋加奈子はニッコリと微笑んだ。
「それで、加奈子。なんていうか」
「いいの。『彼女』がいるんでしょ。あれは父が会社でもらってきたチョコレートを
 転用しただけ。日頃の感謝の気持ちです」
「そ、そうか。俺はてっきり」
 直人は決まりの悪い思いで頭を掻いた。
「残念でした。直人はモテるもんね」
「もういいだろ。悪かった」
 加奈子は吹き出して、上背のある直人の肩をプレゼントの箱で叩く。
「ううん、嬉しい。お金を使わせちゃってごめんね。これ開けていい?」
「ああ」
 中身は焼き菓子だ。加奈子は驚いて直人を見返す。
「アンテノールのマドレーヌじゃない。これ好きだって言った?」
 直人は肯いた。実際に覚えていたのは直也だが、わざわざ教える必要もない。
「結構、細かいのね?意外」
「煩いぞ。気に入らないなら返せ」
 伸びてきた直人の腕から慌てて菓子の箱を避難させる。
「駄目よ。もう、これは私のもの」
 間近にある直人の存在を加奈子は楽しんだ。
 これは恋だろうか、といつも思う。直人が傍に来ると加奈子は発情する。
 紛うことなき厳然たる事実だ。
 野生動物であれば疑うことなく恋愛であろうが、出来損ないの人間という種に
 おいてはいかがなものか。
「絶対に返しません」
 甲高い声で悲鳴を上げる自分を加奈子はいやらしいと思った。
 しかし、否定するつもりもない。
「勝手にしろ」
 直人は呆れて加奈子の隣に腰かけた。加奈子と顔を見合わせて同時に吹き出す。
 人気のない実験準備室で二人は予鈴が鳴り出すまで話し込んでいた。

「どうも」
 試薬を渡す加奈子に直人が礼を言う。
 加奈子の直人への第一印象は、一目惚れなどという生易しいものではなかった。
『これがあの女の自慢の彼氏か』
 極めて冷徹な事実確認であった。
「ねえ。次って神谷の数学だよね。あいつ加奈子に気があるんじゃない?」
「まさか。あの先生。三十は越えてるでしょ。気持ち悪いよ」
「ええ!あれで結構、人気があるんだよ。バレンタインにチョコをあげる子もいるし」
 加奈子はひとつ離れたテーブルにいる麻理子を眺める。
 自分の美しさに微塵の疑いも持っていない高慢な横顔だ。
「ちょっと渋いしさ」
 加奈子の目から見ても麻理子は完璧である。血肉で作られているとは信じ難い、
 傷ひとつない肌はチタン合金の骨格を合成樹脂で覆ったようだった。
「興味ない」
 なぜ麻理子の事がこれほどまでに気になるのか。加奈子は自分でも分析できない。
 高校に入学して以来、加奈子は容姿においては勿論、あらゆる面でことごとく
 麻理子と比べられてきた。
「ハードルが高過ぎなんだよ。加奈子は」
 表面上は、双方とも無視を決め込んでいる。
「ねえ。霧原君もそう思わない?」
「そんな事はどうでもいいからちゃんとやれよな。授業中だぞ」
「いやん。怒られちゃった」
 友人の声は、先刻とはトーンが一オクターブは違う。好意を持っている相手に対する
 女の自然な反応だ。
 自分でもやっているわけだが、まったく持って滑稽である。
 理性も本能も同じ目的、つまり生存と繁殖のために働くものだ。しかし、理性が本能を
 批判するのはなぜか。どういう役割を持っているのか加奈子は不思議である。
「加奈子」
 直人の声で加奈子は我に返った。
「どうした?」
「ごめん。これで全部済んでる。後は数値を合わせるだけかな?」
 訝しげな顔で直人が答える。
「範囲内だ」
「じゃあ、後はレポートだけ」
「それが面倒なんだよね」
 友人の言葉を聞き流しながら、加奈子は思う。
 麻理子でも泣く事があるだろうか。自分を飾るためではなく、心の底から絶望して
 涙を流すだろうか。
 その時こそ加奈子の中にある疑問がすべて解ける。そんな気がした。

「おまえのせいで恥を掻いたぞ」
 帰宅した直人は開口一番そう言った。
「加奈子は俺の事なんかなんとも思ってないんだ。おまえが変な気をまわすから
 無駄な出費だ」
 リビングの椅子に乱暴に鞄を置く。宿題をしていた直也は顔を上げて兄の顔を見た。
「加奈子さんがそう言ったの?で、それを信じたの?」
「本人が言うんだ。間違いない」
 直也はため息を吐かざるを得ない。他人の心の機微にこれほどまでに鈍感になれるのも
 一種の才能だ。
「なんだ?」
「もういいよ。勘違いしてすみませんでした」
 直也は席を立つ。
「直也?」
「エクレアがあるんだ。母さんが二人で食べなさいって」
 菓子折りを持って戻ってきた。
「あと、これ。食費をあげてなかったからって」
 茶封筒の中に紙幣が入っている。
 母親は掃除と洗濯に加えて、こういった気遣いをみせるが直人にじかに渡そうとは
 しなかった。その他のあらゆる面で直人は母親に避けられていると思う時がある。
 それでいて、直人を見る彼女は、母親とは思えないような不可思議な表情なのだ。
 まるで、直人を通して他人の面影を追っているような様子である。
「オアフのだよ」
 蓋を開けて直也が箱を差し出す。だが、直人は覗き込んだだけで手を出さなかった。
「俺は後でいい」
「そう?」
 直也は遠慮なく自分の分を口に運ぶ。
 弟が食べているのを見ると、とても美味しい食べ物なのではないかと思わされるが
 実際に味わうとそうでもない。直人はこれが昔から不思議で仕方がなかった。
「なあに?兄さんのはこっちだよ」
 菓子折りを押して寄越す直也に手を伸ばして口の端についているチョコレートを
 拭ってやる。
「兄さん?」
 親指についたチョコレートを舐めてみたが、やはり普段と同じ味だ。
「味覚の形成には経験が重要な要素だが、俺と直也はあまり差はないはずだよな。
 どうしてこうも嗜好に違いがでるんだ?」
 同一の両親からは現れるはずのない遺伝子座の決定的な差異か。
 麻理子の話が正しいのか。
 離婚争議の最中に父は一度だけ母を責めた。
『本当に二人とも俺の子供か?』
 あの時の母の顔は忘れられない。
「馬鹿馬鹿しい」
 自分で味覚は経験則によるものだと断じたではないか。自己矛盾にも程がある。
「なに言ってるの?意味がわかんないよ。それと今のだって、ぼくのなんだから
 勝手に食べないでよね!」
 直人は箱を押し返した。
「これ食べていいぞ」
「本当!なんで?お腹空いてないの?病気とか?」
「違う。俺はデリケートなんだ。精神的ストレスで食欲が失せた」
 鞄を掴んで立ち上がる。
「なにそれ?夕食は?」
「いらない。直也の好きにしろ」
 なぜか機嫌の悪い兄の背中を直也は見送った。

「うーん」
 ケータリングのメニューを一通りめくった結果、直也は宅配ピザをとることにした。
「すみません。ダブルチーズ。ペパロニは抜いてください。はい、お願いします」
 携帯の通話を切断する。メールに気付いて直也はキーを操作した。
「瑞樹ちゃんだ」
『直也君。今、なにをしてますか?』
 バレンタインのメッセージカードで遊園地に誘ってくれた女の子である。
「ええと。夕食のピザを頼みました、と」
 送信ボタンを押した。宿題を再開してしばらくすると、またメールが着信される。
『おいしそう。私はもう食べ終わりました』
 先週の土曜日に瑞樹の友人と直也の友人を混ぜた男女四人で映画を見に出かけた。
「なにを食べましたか?献立は?」
 瑞樹の父親は公務員で毎日判を押したように定刻に帰宅するという。
 母親は今時、珍しい専業主婦でおやつまで手作りしてくれるのだそうだ。
『普通です。なめこのお味噌汁とカジキの焼いたのとほうれん草のお浸し、あとポテト
 サラダと豆苗入りのだし巻き卵も食べました。だし巻き卵はお母さんの得意料理です』
「すごく美味しそうですね、と」
 直也は心からそう思った。
 最後に味噌汁を口にしたのがいつだったか容易には思い出せない。
「でも、全然、普通じゃないんだけど」
 それとも、自分の状況がおかしいのか。
 直也は食卓を眺めた。かつては、ここに家族がいた。しかし、今は直也だけである。
「仕方ないけどね」
 直也が触れることを許された小さな世界の中で甘いものは菓子だけだと思い知らされて
 いた。だから、菓子が好きなのである。
 携帯の着信履歴の中から瑞樹の番号を探す。
 回線が繋がると同時に直也は彼女の名前を呼んだ。
「瑞樹ちゃん」
『直也君!どうしたの?』
「急にかけてごめんね。今、大丈夫?」
『うん、平気。直也君からかけてくれたの初めてだよね?すごく嬉しい』
「そうだった?」
『そうだよ!だから、直也君は綾子ちゃんの方を気に入ったのかなって思ってた。
 綾子ちゃんは可愛いし』
「それはないよ」
 母子家庭の綾子では、直也の理想にとって適当でない。幸せな家庭の虚像を求める
 彼の好みに合わないのだ。
『本当?じゃあ、今度は二人で出かける?』
「いいよ。どこに行く?」
 愛想良く瑞樹に応じながら手元では宿題を仕上げる。
『遊園地に行きたい』
 直也は映画館で隣に座っていた瑞樹のことを考えた。長い髪に包まれた顔は頬も唇も
 柔らかそうで傍に寄ると菓子のような甘い匂いがした。
『瑞樹ね。昨日、春物のワンピースを買ってもらったの』
 女の子は甘い味がするのではないかと思った。
 それで、直人は菓子を食べる必要がないのだ。そうに違いない。
「リボン」
『え?』
「一緒に出かける時、リボンをつけてきてくれない?」
『いいけど。直也君はリボンをしてる子が好きなの?』
 菓子は包装紙に包まれて、リボンがかけられているものだ。
「うん。大好き」
 直也は笑顔で答えた。



END
EDIT  |  20:48 |  二次創作  | CM(3) | Top↑

2008.03/22(Sat)

某TV局「めざまし土曜日」で… 

鎌倉観光案内のレポーターが入った洋食屋さんのマスターが
お店自慢のビーフシチューの食べ方を懇切丁寧に説明した末に
「はい、あ~ん」
苦笑いしつつ、あ~んして食べさせてもらう女子レポの図を見て、
即座に脳内兄弟変換……

「はい、あ~ん…」
困惑しつつも、口を開けて食べさせてもらう直也、
それを見た直人 間髪入れずテーブル返し。
もちろん、PKなので周囲は何が起こったのかわからず、唖然騒然。
直也、そそくさと兄の袖をつかんで店を出る。
後には、オムライスを頭からかぶったマスター、の図。

……スイマセン、とことん腐りきってます
ちょっとカマっぽい女性っぽいマスターは、三雲か曾根崎で(殴)
EDIT  |  08:21 |  交換日記  | CM(7) | Top↑

2008.03/14(Fri)

企画siko作品 第11&12章 

           2007.12~2008.03〈NIGHT HEAD〉アニバーサリー企画
     企画もいよいよ本日で終了です、たくさんのご投稿ありがとうございました



「OBSCURE」その11&12
UPしました、↑アニバ企画頁からお入り下さいませv
↑無理やり完結(^^;)


*や、アニバ企画、終了とは申しましたが、そこは一応の区切りということでv
 連載中のお話もまだ残っておりますので、そちらが終わるまでは暗黙の了解、
 と申しましょうか、その、まあ、後夜祭ということで(笑)

 や、それにしても12月に企画を立ち上げた際は、まさか、こんなにもたくさんの
 皆さまに参加していただけるとは思いませんでしたし、こんなに盛りあがるとは
 思いもよりませんでした(*^_^*)
 期間中、皆さまから投稿いただいた作品はどれもこれも趣向が凝らされた読み
 ごたえ&見ごたえのあるものばかり、それをUPする作業は、あたかも冬の夜空に
 花火を次から次と打ち上げるごとくで、まさにお祭り気分そのものでした
 いやもう、本当に楽しい思いをさせていただきました、作品を寄せてくださった、
 chocoさん、saekoさん、シシーさん、EMIFUさん、浅倉りゅぅさんに、多謝、
 スペシャルサンクスです
                  
 
 
 
 
EDIT  |  21:56 |  二次創作  | CM(5) | Top↑

2008.03/12(Wed)

アニバーサリー企画第21弾!  (chocoさん作品XI) 

           2007.12~2008.03〈NIGHT HEAD〉アニバーサリー企画





<聖バレンタインの憂鬱> 前編

※ 直人は17才、直也は11才。超能力関係なしのこれでもかという平和設定となっております。
  また、高橋留美子風のラブコメを目指しましたが遠く及ばないことをお許しください。



「モロゾフみっけ!じゃあ、私はこれだけもらうわね」
 麻理子はブランドが印刷された包みを破って中に入っていたメッセージカードだけを直人に投げて寄越す。
「ああ。それで、こっちはどうすればいいんだ?」
 机の上だけでは足らずに床にも置かれた紙袋を直人は目で追った。中身はすべてバレンタインチョコレートである。
「こっちの二つは手作りチョコ。絶対に食べちゃ駄目よ。いい?」
「どうしてだ?」
 呆れた様子で腕組みすると麻理子は直人の前に指を立てた。
「わかってないわね。衛生面が不透明でしょう?女ってのはこういうのに何を混ぜるかわからないの。悪夢にうなされたくなかったら捨てなさい!」
 直人には想像もつかない事が行われているらしい。
「そうか。じゃあ、これは?」
「こっちの二つは市販品だけど、細工されてないって断言できるのはこの一袋分だけね。これは、食べていいわ」
「後は?」
「処分!生ゴミの日に目立たないように廃棄ね」
 暖房が切られて、冷え始めた教室の中で麻理子は学校指定の紺色のコートを羽織っている。なんの洒落っ気もない凡庸な衣服がかえって彼女の美貌を引き立てていた。
「言っとくけど、自分のチョコを捨てられたなんて知ったら、どんな呪いをかけられても文句を言えないわよ。細心の注意を払うのね」
 直人は頷く。
「わかったよ」
「そう。じゃあ、帰りましょう。ああ、そうだ。忘れてた」
 鞄から取り出したジャンクフードを麻理子は直人の手に押し付けた。
「お返しはモロゾフのクッキーでいいわ」
「どうしてキットカットがそんなものに化けるんだ?」
「知りたい?」
 スポーツバックを肩にかけ、両手に紙袋を抱えるのを待って麻理子は直人に近付く。
「ああ、知りたいね」
 立ち上がった直人は、麻理子より随分と上背があった。手足が長く、筋肉質だがスレンダーなモデル体型である。
「あのね」
 手招く麻理子の方へ体を傾けた。彼女の手が肩にまわされて、柔らかい唇の感触が直人の感覚を圧する。
「化けた?」
 紙袋が床に落ちた。直人の腕が麻理子の体を掴んで抱き寄せる。
 重なり合った二つの影はまるで絵のように美しかった。

「それで、これだけなんだ」
 麻理子の選別に合格した紙袋を直也は覗き込んだ。
「ああ。好きにしていいぞ」
「わーい。でも、なんか去年より質落ちてない?これも不景気ってヤツ?」
「知るか」
 私服に着替えた直人はテーブルを挟んで直也の前に腰かける。
「母さんは?」
「サークルの集まり」
「またか」
 父親が仕事で遅いのは慣れていたが、最近の母親の家事放棄は目に余るものがあった。
「ピザかなんかとる?それとも、ファミレス?」
 しかし、たいした不自由もない。
「面倒だな」
「仕方ないよ。来月、発表会なんだって。なんか大きいホールを借りるらしくて準備が大変みたい」
「じゃあ、車が要るだろ?父さんは暇がとれるのか?」
 チョコレートの検分を続けながら直也は首を傾げた。メリーズも悪くはないんだけど、と呟く。
「さあ。でもやるんじゃない?あれだけはやらないとまた離婚の危機だもん」
「確かにな。もうあんな騒ぎはたくさんだ」
 四、五年前に両親が離縁しかけたことを思い出し、直人は顔をしかめる。
「あ!ヨックモック!」
 直也は紙袋から有名ブランドの包装紙に包まれた箱を取り出した。
「開けるよ?」
 中身はチョコレートの詰め合わせである。
「美味しそう!はい、カード」
 手渡されたカードには珍しく見知った名前が書かれていた。
「誰?」
「倉橋加奈子」
 彼女とは二クラス合同の化学実験の授業で同じテーブルに着くことになったのがなれ初めである。男受け抜群の清楚な美人である麻理子とは異なり、理知的な少々冷たい感じのする美貌の持ち主だった。
 それに、なにより麻理子の『その顔で私の男に手を出す気?鏡をよく見て出直しなさいよ』攻撃に怯まなかった数少ない猛者の一人でもある。
「さすがに気合入ってるね。これはビターチョコみたい。はい」
「なんだ?」
「一個くらい食べてあげたら」
 渋々、口を開けると直人は弟の手からチョコレートを食べた。カカオの香りとともに生地が舌の上で忽ち溶けてゆく。
「美味しい?」
 直人は顔をしかめた。
「甘い」
「ええ!すごく美味しいはずなんだけどな」
 直也は首を傾げてひとつ摘んで口に入れる。
 途端に口元が弛んで、顔は紅潮し、目は潤んできた。直人と同じものを味わっているとはとても思えない幸せな顔である。
「それ。全部食べていいぞ」
「やった!高いチョコはやっぱり違うよね?ポッキーも美味しいけどさ。ぼく、兄さんの弟で本当に良かった。神様に感謝だよ!」
「そいつはどうも」
 いそいそ立ち上がると直也はキッチンの方へ歩き出した。
「コーヒー入れるね。口直ししたいでしょ?」
 上機嫌である。直人は苦笑して弟を見送った。

 インスタントコーヒーを二つ入れて戻ってきた直也はテーブルにカップを置いた。
「コーヒーだけじゃアレだよね?なんかお茶請けがあったかな?」
「俺はいいよ。直也はチョコを食べればいいだろう?」
 直也は紙袋を大事に抱えて首を振る。
「駄目!この『夢の高級チョコレートシリーズ』はこれから毎日ひとつずつ大事に食べるんだから!」
「勝手にしろ」
 直人は呆れて弟を眺めた。
「あ、そうだ。ちょっと待ってて」
「忙しないな。いいからゆっくり座ってろよ」
「すぐだから。待ってて」
 スリッパを引っかけて小走りにかけて行く直也は本当に小柄である。年齢が離れているし、直人が並より上背があるので目立つのかもしれないが、二人の中に血縁という類似性を探すのはとても難しかった。
「小母様の誠実さが疑われるわね」
 麻理子の中に時折現れる率直さとでも呼ぶべきものに直人はいつも魅せられる。彼女に揶揄された時も直人は馬鹿馬鹿しいと断じたが反対にこう応じられた。
「男ってどうして自分の母親や妻のことを盲目的に信じられるのかしら?呆れちゃう」
 麻理子の意見はいつも悪辣にして直裁である。
「馬鹿みたい」
 しかし、直人はこう思った。男の側からは自分の子供の出生について実際に出産した女性とは違い、常に疑問は残る。だからこそ、信じるという行為が大事なのだ。
 自分の世界を支え続けるために、相手が誠実であると信じるしかないのである。
「お待たせ」
 直也の声で直人は物思いの水底から引きずり出された。
「ええとね」
 白いビニール袋からラッピング用の小さな紙袋やピンク色のハートの柄が印刷されたプラスチックケースが出てくる
「どうしたんだ。これ?」
「今日、家庭科の実習があったからクラスの女の子がくれたんだよ。義理チョコの代わりだって」
 それにしては、用意周到な包装だ。リボンや包みと同じ色のカードも付けられている。
「もらったのはぼくが食べなきゃだから。兄さんにはこっちね。ぼくが作ったヤツ」
 星型やハートに抜いたクッキーの入った冷蔵用のジップロックが直人の前に差し出された。
「プレーンとココアのクッキー。あんまり甘くないから食べられるでしょ?」
 封を開けると香ばしい甘い香りが溢れてくる。
「直也。おまえ、こんなものを作れるのか?すごいな」
「作れるっていうか、簡単だよ。材料を混ぜて冷蔵庫で冷やして、後は焼くだけ」
 では、有名店の菓子はなぜあんなに高価なのか。直人は納得のいかない思いで一枚つまんで口に放り込んだ。
 麻理子へのお返しに大枚はたく事を考えると今から気が重い。
「どう?甘すぎる?」
「これくらいなら大丈夫だ。それより、これ味が似てるな。昔よく食べただろ。アーモンドの付いてるヤツで」
「タカセのアーモンドチュイール?」
 直也の言葉に直人は肯いた。
「なんでだろ?アーモンドパウダーを入れたからかな。でも、懐かしいね。みんなでよく行ったよね」
「ああ。あの頃は父さんもそれほど忙しそうじゃなかったし、休みには家に居たんだな。今じゃ考えられないが」
「うん。あそこの海老のクリームグラタン大好き!」
 手を伸ばして直也がクッキーを抜き取る。歯を立てるとクッキーは脆く崩れた。
「本当だ。我ながら『よくできました』だね。でも、あそこのアーモンドチュイールはチョコも付いてるし、結構甘いよね?なんで平気なの?」
「食べ慣れてるからな。それに味が単純だろう。香料の味だとか変に柔らかい食感が嫌なんだ」
 先刻のトリュフの感触を思い出して直人の口はへの字になる。
「ふうん」
 確かに直也が覚えているケーキやスコーンも紅茶よりコーヒーが合う素朴でわかりやすい味だった。
「スコーンは焼き立てを出してくれるんだよね」
 直也は記憶の中にある菓子の姿を思い浮かべる。顔は自然と弛んでしまうのだった。
「そんなに言うなら、次の休みに連れて行ってやるよ」
「え!本当?」
 しかし、直也は見る間に考え込む顔になる。
「でもさ。デートとかしなくていいの?麻理子さんは?」
「あいつは忙しいんだよ。ピアノだとか英会話だとか」
 直人は顔を他所へ向けた。既に申し入れを断られているらしく話したくないようである。
「そうなんだ」
 友枝麻理子と兄が付き合いだして二年くらいになる。直也は、この女性を一目見た時からこう決めていた。
 必要以上に麻理子とは関わり合いにならない。
彼女が利権を主張するものに関してはたとえそれが不当と思われる場合であっても絶対に逆らわない。
 この二点を死守することを胸に誓った。
「じゃあ、いいかな?」
「なにが?」
 直也には小学校に上がった年に立てた人生設計がある。『波風のない平凡な人生を送る』という小さな夢だ。
「ううん。何でもない」
 この夢の実現のためなら目先の楽しみなんか喜んで捨てる。
 大体、昔から直人の女性の趣味は誤っていると直也は思った。容姿の好みはともかく、問題は中身である。
どうして揃いも揃って、自己主張の強い『女王様』タイプなんだろうか。
「変なヤツだな。行くのか行かないのか。どっちなんだ?」
 苛々し始めた直人の声に慌てて直也は答える。
「行くよ。まだ、お年玉も全然使ってないし」
 麻理子はこの『女王様』の中では最終形態といえた。
 今までの歴代の美人と比べても麻理子は飛び抜けて綺麗である。その上、賢しさ、遠慮のなさ、上昇志向の高さでも一級品だ。
「そうだ。ついでに加奈子さんにもお返しを買ったら?」
「はあ?」
「だって、ヨックモックだよ!まさか何もしないつもりだったの?」
 今度は直人が考え込む顔で弟を見返す。
「不味くないか?それは」
「なんで?ホワイトデーとかじゃない日にちゃんと『彼女』いるけど、これからも友達として仲良くしてって言えばいいじゃない」
「そういうものか?」
 直人は弟の提案を検討してみた。確かに化学の授業でも委員会でも席を同じくしている倉橋加奈子にはいつも世話になっている。
彼女の女性には珍しい高度な論理性は議論を交わしても楽しいし、容姿の面でも嗜好の範囲内だ。胸は麻理子に比べて小さいが、足の形状は加奈子の方が好みである。特に足首の脆そうな感じは出色だった。
「一理あるな」
「でしょ」
 これで来年のバレンタインデーにも希望を繋げる。直也は高級チョコレートの絶対数を確保しなければならないのだ。
「何にするかな?麻理子が言ってたヤツと同じでいいか。面倒臭い」
「それは、さすがに不味いんじゃ」
 携帯のバイブレーションが直也の声を遮る。
「麻理子さん?」
「だな」
 なんという勘の良さだ。直也は早々に退散すべく立ち上がった。
「おい。夕飯は?」
「ぼくはこれでいいよ」
 カップラーメンの容器を振ってみせる。直人は肯いて通話ボタンを押した。
「どうした?」
 物理的に離れていても麻理子は直也の食欲を完全に失わせる存在だ。背筋が寒くなるのである。
「今から?!ああ。うん、わかったよ。どこに行けばいいんだ?」
 直也は廊下に出て自室に向かう。ピンク色のレースの柄が印刷された小さな紙袋につけられたカードを開いてみた。
『直也君。今度、一緒に遊園地に行きませんか?』
「悪くないかも」
 クラスの男子の間で話題になる女の子の名前がカードの端に書かれていた。


END




EDIT  |  07:52 |  二次創作  | CM(6) | Top↑

2008.03/04(Tue)

企画siko作品 第10章 

           2007.12~2008.03〈NIGHT HEAD〉アニバーサリー企画



「OBSCURE」その10
UPしました、↑アニバ企画頁からお入り下さいませv



*え゛、10章?いつのまにこんなに長く…(すっとぼけんなッ!)
 いやもう、いくら何でもこれ以上の企画延長はないっしょ~(^^;)
 次回、何が何でも終わりにします!(…と追い込んでおこう)
EDIT  |  23:59 |  二次創作  | CM(4) | Top↑
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